個人開発の定石は「無料で出してアプリ内課金」。有料の買い切りアプリは「売れない」と言われがちです。

僕は1年前、人生で初めてリリースしたスマホアプリを、あえて100円の買い切りで出しました。結果は初週売上1本。定石は正しかった — と思いきや、話はそこで終わりませんでした。リメイク後、このアプリはApp Storeのエンタメ有料ランキングで7位に入ります。

爆死と小さな逆転、両方の数字を持っている個人開発者はそう多くないと思うので、正直に書き残します。

この記事で分かること

  • 100円買い切りアプリのリアルな売上(初週1本)
  • 初リリースで学んだ「有料の壁」の正体
  • リメイクで何を変えて、何が起きたか
  • 有料ランキングは売上数が少なくても上位に入れるという構造の話

結論: 有料アプリは「売れにくい」が「戦う場所」は空いている

先に結論です。

  • 初めてのアプリを100円買い切りでリリース → 初週売上1本
  • デザインとUIを一新するリメイクを実施 → エンタメ有料アプリランキング7位にランクイン
  • 学んだのは、有料アプリは売上の絶対数が少なくても、有料ランキングでは十分上位に入れるということ。無料ランキングが巨人の殴り合いなら、有料ランキングは対戦相手の少ない別リーグです

CHAOS VISIONはどんなアプリか

「CHAOS VISION -中二病スキャナー-」は、日常の物体をカメラでスキャンすると、AIが中二病的な異名と裏設定を授けてくれるエンタメアプリです。

  • そのへんのマグカップが「深淵ヲ湛エシ聖杯」みたいになる
  • 8つの世界観トーンでランダムにAI生成
  • レア度・属性つきで、ガチャ的な引きの楽しさもある

要するに全力のネタアプリです。そしてこれが、僕が初めてApp Storeにリリースしたアプリでした。

初週売上、1本

初リリースは1年前、2025年の夏です。宣伝は、SNSでリリースを告知した程度でした。

初週の売上は1本でした。100円なので、Appleの手数料を引くと手元に残るのは数十円です。

ただ、正直に言うと絶望はしませんでした。初めてのアプリで、企画→開発→審査→リリース→売上が立つという一連の流れを最後まで経験できたこと自体が、当時の自分には収穫だったからです。とはいえ「なぜ売れなかったのか」は考える必要がありました。

なぜ売れなかったのか

1. ネタアプリと有料の相性が最悪だった

ネタアプリの動機は「ちょっと試してみたい」です。その「ちょっと」の前に100円の壁があると、たとえ缶ジュースより安くても手が止まる。試してもらえないと面白さが伝わらないのに、試すのにお金がかかるという構造的な矛盾を抱えていました。

2. 無名の初アプリに「100円払う理由」を提示できていなかった

レビューも実績もない開発者の初アプリです。スクリーンショットと説明文だけで「これは100円の価値がある」と伝えきる必要がありましたが、当時のストアページはそこまで作り込めていませんでした。

3. そもそも露出がなかった

「中二病 スキャナー」で検索する人はいません。花庭と同じ「誰も検索しない新概念」問題です。検索流入もランキング露出もない状態では、面白いかどうか以前に、存在を知られていませんでした。

リメイクで何を変えたか

リメイク版をリリースしたのは2026年5月。初リリースから約9ヶ月後です。

きっかけは、この1年でAIの能力が格段に上がっていたことでした。コードだけでなく、デザインの提案力が別物になっていた。1年前の自分では作れなかった画面が、AIとの共同作業なら作れるようになっていたんです。

  • デザイン・UIを、ある人気ゲーム風のオシャレで厨二感のあるデザインに全面刷新
  • ストアページ・スクリーンショットもすべて作り直し
  • 価格は100円のまま据え置き

中身の「物体をスキャンして異名を授かる」という体験は同じです。変えたのは、見た目と見せ方だけ。それでも結果は変わりました。

そして、エンタメ有料ランキング7位へ

気づいたのは、SNSでリメイクを告知した翌日でした。ストアページを確認していたら、エンタメ有料アプリランキングに38位で入っている。そこから順位はじわじわ上がり、最終的に7位まで到達しました。

App Storeエンターテインメント有料アプリランキングで7位にランクインしたCHAOS VISION

App Storeのランキングには「無料」と「有料」の2つのリーグがあります。無料側はSNSでバズった大型アプリや企業アプリがひしめく激戦区です。でも有料側は、そもそも参加者が圧倒的に少ない

だから売上の絶対数がヒットアプリに遠く及ばなくても、カテゴリ別の有料ランキングなら上位に食い込めます。CHAOS VISIONがまさにそれで、初週1本だったアプリが、リメイク後にはエンタメ有料の7位に載りました。

ランキングに載ると、今度はランキング経由の露出が生まれます。「売れないから露出がない」の逆回転、「少し売れたから露出が増える」というループに入れるのが、有料リーグの面白いところです。

露出はランキングの外にも広がりました。アプリ紹介サイトのAPPLIONに編集部のレビュー記事が掲載され、「日常を異界化する、中二病的ARスキャン体験アプリ」と紹介されています。初週1本のネタアプリに、第三者のレビューが付いた。SNSで自分から叫ぶしかなかった1年前を思うと、これはかなり大きな変化です。

有料アプリから学んだこと

  • 有料ランキングは過疎リーグ — 売上数本の世界でも、カテゴリ上位に入って露出が得られる。無料アプリでは絶対に起きないことが起きる
  • 1本売れたら確実に収益になる — 無料+課金モデルの「DLされたのに1円にもならない」がない。収益構造が単純明快
  • 「出して終わり」にしなければ数字は動く — 初週1本のアプリでも、リメイクという再投資でランキングは変わった
  • 寝かせている間に、AIが育っている — 1年前に作れなかったデザインが、今年は作れた。昔のプロジェクトはAIの進化とともに再起動できる
  • 初アプリの題材としては正解だった — 失うものがない状態で、審査・課金・リリースの全工程を100円アプリで一周できた

まとめ

  • 個人開発の有料アプリは、たしかに売れにくい。初週1本は覚悟する
  • でも有料ランキングは母数が少なく、少ない売上でもカテゴリ上位に入れる
  • ランキング入りすれば露出が生まれ、小さな正のループが回り始める
  • 爆死しても、リメイクで数字は動く。「出して終わり」にしないことが一番の攻略法

ちなみに「作り込んだ無料アプリが爆死した話」は花庭の記事に書きました。無料と有料、両方の爆死と学びを並べて読むと、個人開発のリアルが立体的に見えるはずです。

CHAOS VISIONは今もApp Storeで公開中です。記事の下のアプリカードから、深淵を覗いてみてください。